ukeruメモ
 俺はもう探さない。  
そのことは、俺にとっては観鈴ちんとの、そして「あの夏」との本当の意味での訣別を意味します。  
10年以上のあいだ、俺のなかには、なんらかのかたちで、常にあの夏の海辺があり、コンクリートの橋があり、神社へと続く木立があった。何度でも、何度でも、俺は飽きることなくその光景を脳内で再生しつづけた。それは擦り切れてしまうどころか、夏が来るたびよりいっそう鮮やかになる。たとえその輝きが、たったひとつの宝物をなでつづけて手垢で黒光りしているようなものであっても、俺はその夏の光、暑さ、そうしたものをいとしく眺める以外に特にやることもなかった。  
もう、探さない。  
それは、そうした日々が記憶にしか過ぎないと認めることです。  
記憶ならば、それはもう過去のものです。  
残念ながら、俺は記憶だけを抱えて、じっと座り込んでいることはできないらしい。  
だから、記憶を封じ込める。それこそオルゴールの箱みたいなものに。  
なぜだろう、身を切られるように、つらい。
だけど、そうするしかないらしい。だからいつか、また出会うときがあるかもしれないけど。いまは。  
また今年も夏が来るだろう。
俺は、あと何回の夏を見ることができるんだろう。